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COP18 & CMP8(於 カタール・ドーハ):参加報告

◆ ドーハ会議の結果

 GECは、UNFCCC認定オブザーバーNGOとして、2012年11月26日から12月7日まで、第18回締約国会議(COP18)(京都議定書第8回締約国会合(CMP8)や特別作業部会(AWG-LCA、AWG-KP、及びADP))、補助機関会合(SBSTA及びSBI)を含む)に参加しました。COP会場(カタール国立会議センター)内に設けられたブース出展会場でブースを出展し、GECが環境省より受託している二国間オフセット・クレジット制度(JCM/BOCM)に関するMRVモデル実証調査と実現可能性調査のプログラム紹介を行い、それら調査の主目的であるMRV(測定・報告・検証)のための方法論開発に関して想定されている簡素なMRV方法論のコンセプトを紹介するととともに、2012年度(平成24年度)の調査実施案件の概要紹介資料や前年度に実施した調査の結果概要をまとめたブックレットを配布しました。
 また、COP会場内に設けられた公式サイドイベント会場第7号室において、会期初日の11月26日(月)(13:15〜14:45)に、ベトナム政府、日本環境省、一般社団法人海外環境協力センター(OECC)、及び独立行政法人国際協力機構(JICA)とともに、公式サイドイベント「ベトナムにおける、気候変動に対する政策策定・資金メカニズム・技術移転(Viet Nam: Policy development, financial mechanism, technology transfer to respond to climate change)」を開催しました。GECはこの公式サイドイベントで、「二国間オフセット・クレジット制度のMRVモデル実証調査・実現可能性調査」について、制度概要と調査を通じて開発するMRV方法論も含めて、紹介しました。このサイドイベントの会場が聴衆で埋まり、多数の参加者を得、成功裏に終えることができました。
 他にも、様々な気候変動関連テーマについてのサイドイベントが開催されました。CDM/JIといった既存の京都メカニズムの今後の在り方や将来に向けた改善策に関するものや、二国間オフセット・クレジット制度(JCM/BOCM)を含めた新メカニズム(NAMAsやREDDプラスなど)に関連するサイドイベント(インドネシア政府(インドネシア国家気候変動評議会(DNPI)や国際排出量取引協会(IETA)等の非公式サイドイベントも含む)を中心に出席し、情報収集を行いました。

COP全体会合の様子

ドーハ気候ゲートウェイの概要

COP会場1階のオブジェ



 COP18及びCMP8では、COP17・CMP7(南アフリカ・ダーバンで2011年に開催)で採択されたダーバン・パッケージで決定された内容の具体化が求められていました。特に、京都議定書第1約束期間(2008〜2012年)の終了が目前に迫っている時期に開催されるということで、ダーバン・パッケージでは2013年から第2約束期間が開始すること自体は決まっていましたが、終期と各国の削減目標値についてはダーバンからの積み残しとしてAWG-KPの作業完了に合わせて、CMP8で採択されることとなっており、その結果が求められていました。同時に、京都議定書第2約束期間中の京都メカニズム(CDM、JI、及び国際排出量取引)への参加について、京都議定書第2約束期間の削減目標値を持たない国(日本等)をどのように取り扱うかも大きな問題となっていました。
 AWG-LCAも作業完了がダーバン・パッケージで決まっていましたが、COP13で採択されたバリ行動計画(BAP)で認識された各項目についてどのようにCOP決定として採択するか、そもそも多様な議題が盛り込まれている長期的協力の在り方が各締約国で合意され、採択するに至ることができるのかも大きな関心事でした。特に、新たなメカニズムとしての「市場活用を含む様々なアプローチ」については、ダーバン・パッケージでは「緩和行動の費用対効果の向上・促進のための様々なアプローチを、締約国は個別又は共同で開発し、実施することができることに留意」していますが、その満たすべき具体的な基準と、その様々なアプローチのためのフレームワーク(Framework for Various Approach:FVA)の検討作業計画を定めることがCOP18の課題となっていました。また、新たなメカニズムとしてのもう一方である「新たな市場メカニズム(New Market-based Mechanism:NMM)」も同様に、実施手順の検討作業計画を定めることがCOP18の課題となっていました。
 さらに、ADPは2012年5月に作業が開始されたのを受けて、作業計画の策定が課題となっていました。
  1. 京都議定書第2約束期間に関するCMP決定
  2. 京都メカニズムに関するCMP決定
    (1)第2約束期間における京都メカニズムの利用について
    (2)CDMに関するガイダンス
    (3)JI実施に関するガイダンス
  3. 新たなメカニズム(FVA・NMM)に関するCOP決定
  4. ADPの作業計画


@京都議定書第2約束期間に関するCMP決定
 京都議定書の第2約束期間への参加については、すでに日本は削減目標を負わないということでの不参加を表明しており、ロシアも同様のスタンスを取ってきました。カナダに至っては、京都議定書自体からの脱退を表明していますし、アメリカは京都議定書の批准を行わないまま、第1約束期間を終えようとしていました。カタール会議が始まる直前にオーストラリアが第2約束期間への参加を表明したため、開会全体会合ではその旨のステートメントを行ったオーストラリアには会場内のNGO等から大きな拍手が送られました。
 また、昨年のダーバン会議では、EUが第2約束期間での削減目標の設定を認め、削減目標値の設定と第2約束期間の長さがEUと開発途上国との交渉の争点となっていました。開発途上国は削減目標値を引き上げさせるには短期間設定が必要で、2017年までの5年間(第1約束期間と同じ期間)の設定を主張していました。他方EUは、第2約束期間とADPの結果としてできる新たな法的取極めの発効時期との整合性の観点から、2020年までの8年間の設定を主張していました。
 結果としては、2020年までの8年間の第2約束期間となりました(2013年1月1日に開始し、2020年12月31日に終了)(決定1/CMP.8「Amendment to the Kyoto Protocol pursuant to its Article 3, paragraph 9 (the Doha Amendment)」(以下KP改正決定)、第5段落)。なお、この京都議定書改正はCMP8で採択されましたが、その各締約国の改正受諾の手続きが行われ、それから90日後に当該国において発効することとなるため、その発効までの期間に暫定適用することができることも認められました。暫定適用を行わない締約国についても、自国の法制度等に従った上で、第2約束期間に関連する目標達成及びその他の責任を実施するよう求められています(KP改正決定、第6段落)。
 先進締約国の削減目標値については、KP改正決定の附属書Iの第1条Aにおける「京都議定書附属書B」で下記の表形式で示されています。同第1条C「京都議定書第3条第1項bis」において、先進締約国全体の排出削減目標は、1990年比18%減であることが示されています。なお、カナダ、日本、ニュージーランド、及びロシアは第1約束期間の削減目標値のみが記載されており、第2約束期間に関連する項目は黒塗りされていますし、アメリカについては批准をしていないため、国名すら載っていません。

京都議定書附属書B(CMP8決定「AWG-KPの作業結果」の附属書I 第1条:修正 A)
下表を京都議定書附属書Bと置き換えることとする。
※黄色ハイライトはEUバブルとしての削減目標値設定。色付けはGECによる
締約国
第一約束期間の削減目標
(対基準年比)
第二約束期間の削減目標
(対基準年比)
参照年
第二約束期間の削減目標
(対参照年比)
2020年までのGHG削減自主目標
(対参照年比)
オーストラリア
108
99.5
2000
98
-5〜-15%又は-25%
オーストリア
92
80
n/a
n/a
ベラルーシ
88
1990
n/a
−8%
ベルギー
92
80
n/a
n/a
ブルガリア
92
80
n/a
n/a
クロアチア
95
80
n/a
n/a
-20%、又は-30%
キプロス
80
n/a
n/a
チェコ
92
80
n/a
n/a
デンマーク
92
80
n/a
n/a
エストニア
92
80
n/a
n/a
EU
92
80
1990
n/a
-20%、又は-30%
フィンランド
92
80
n/a
n/a
フランス
92
80
n/a
n/a
ドイツ
92
80
n/a
n/a
ギリシャ
92
80
n/a
n/a
ハンガリー
94
80
n/a
n/a
アイスランド
110
80
n/a
n/a
アイルランド
92
80
n/a
n/a
イタリア
92
80
n/a
n/a
カザフスタン
95
1990
95
-7%
ラトビア
92
80
n/a
n/a
リヒテンシュタイン
92
84
1990
84
-20%、又は-30%
リトアニア
92
80
n/a
n/a
ルクセンブルク
92
80
n/a
n/a
マルタ
80
n/a
n/a
モナコ
92
78
1990
78
-30%
オランダ
92
80
n/a
n/a
ノルウェー
101
84
1990
84
-30〜-40%
ポーランド
94
80
n/a
n/a
ポルトガル
92
80
n/a
n/a
ルーマニア
92
80
n/a
n/a
スロバキア
92
80
n/a
n/a
スロベニア
92
80
n/a
n/a
スペイン
92
80
n/a
n/a
スウェーデン
92
80
n/a
n/a
スイス
92
84.2
1990
n/a
-20〜-30%
ウクライナ
100
76
1990
n/a
-20%
イギリス
92
80
n/a
n/a
カナダ
94
日本
94
ニュージーランド
100
ロシア
100
 削減目標値の更なる野心化(削減幅の拡大)については、今回定められた削減目標値を各先進締約国が2014年までに再検討し、2020年の1990年比の削減幅を最低でも25〜40%とすることを踏まえた各国の削減目標値の野心化ができるとしています(KP改正決定、第7段落)。

 第2約束期間の削減目標値を有する先進締約国は、その登録簿内に余剰保留口座を開設しなければなりません(KP改正決定、第23段落)。また、目標達成してもなお余剰が生じた締約国においては、(a)未償却・未取消のERU・CERは各クレジットについて割当量の2.5%までを繰り越し、(b)未償却・未取消のAAUは次期約束期間の割当量に追加しなければなりません。また、AAUについては、上記の余剰保留口座に移転しなければなりません(KP改正決定、第24段落)。


A京都メカニズムに関するCMP決定

(1)第2約束期間における京都メカニズムの利用について
     @で第2約束期間の削減目標値が設定されていない先進締約国が京都メカニズムに参加できるか否かが、CMP8での一つの争点でありました。第2約束期間への参加を促すためと思われる開発途上国側からの「不参加国の京都メカニズム利用禁止」という主張はよく聞かれていましたが、昨今の炭素クレジット価格の暴落を背景として、クレジット需要の確保の必要性からバイヤーとして日本を排除することはないのではないか、との憶測もありました。つまり、クレジットの重要な買い手となりうる日本がクレジットを利用できなくすることは、2013年以降のCDMクレジット(CER)の需要をさらに押し下げてしまうことになり、それはすなわちCDMプロジェクトを実施する開発途上国側にとってメリットを無くすことに他ならない、ということです。
     とは言え、これまでにCDMプロジェクトの恩恵を十分に受けていない国も多く、また市場メカニズムそのものに反対の立場をとるアルバ諸国等もいて、予断を許さない状況の下で交渉が進められました。そのような交渉の最中に、「排出枠取引の継続断念も=日本、京都延長不参加で―COP18」という報道が出ました(時事通信社、2012年11月28日)。COP会場にいる日本参加者はこの報道の影響がどのようなことをもたらすのか話題になっていましたが、あくまでも京都議定書第2約束期間への不参加を確保することが重要であり、排出枠取引への参加を断念するということを即意味するものではないのであろう、との見解も聞かれました。

     さて、京都議定書第2約束期間における京都メカニズムの在り方に関する交渉は、基本的に非公開で行われたため、その決定に至る経緯の詳細は分かりませんが、CDMに関する事務レベル折衝(コンタクトグループ)での交渉を見ている限りにおいては、ベネズエラに代表されるアルバ諸国が「第2約束期間に目標を持たない先進国の京都メカニズム利用禁止」を強硬に主張していました。現行CDMに関する交渉であるため、第2約束期間関連の交渉はAWG-KPで行うべきとの多数の締約国の説得にも関わらず、CMPの交渉議題である以上本議題でもその文言を入れるべきであるとの一貫した主張が続けられました。いずれにしても、日本の2013年以降のCDM利用(CERの利用という観点において)は、下記に示す通り大きな制約を課されることとなりました。
    • 第2約束期間中、開発途上国は継続中CDMプロジェクト及び2013年以降に登録されるCDMプロジェクトに参加し続けることができる(KP改正決定、第12段落)。
    • 第2約束期間の目的に沿い、2013年以降も先進締約国は継続中CDMプロジェクト及び2013年以降に登録されるCDMプロジェクトに参加し続けることができる。ただし、第2約束期間の目標値を有する先進締約国のみがCERの移転・取得を行うことができる(KP改正決定、第13段落)。
      ⇒日本のような第2約束期間不参加の先進国は、CDMプロジェクトに参加(すなわちプロジェクト参加者としてCERを原始取得)することはできるが、CERの移転・取得(すなわちCERの海外への売却と海外からの二次取得)はできなくなる。
    • 第2約束期間の目標値を有する先進締約国で、第1約束期間中にJI及び国際排出量取引の適格性要件を満たしている場合には、第2約束期間においても引き続きCER・AAU・ERU・RMUの移転・取得を行うことができる(KP改正決定、第15段落(a))。

 これらの決定は、あくまでも締約国(Party)を拘束するものであるため、CDMプロジェクトやJIプロジェクトに参加しようとする民間事業者やクレジットの国際取引を行う民間事業者を直接拘束するものではない点に留意が必要です。つまり、日本国の登録簿内に開設した口座を利用したクレジットの移転・取得について制約が課されることになったということであり、逆に言うと第2約束期間に参加する先進国の登録簿に口座を開設していれば、上記のような制約は受けないこととなります。

 なお、上記の制約は第2約束期間(すなわち2013年以降)に発生した排出削減に関するクレジットに関する者であり、2012年末以前に発生した排出削減に関するクレジットについてはこの制約を受けないこととなります。クレジットの発行時期ではなく、あくまでも排出削減が行われた時期に関して、2012年までか2013年以降かで判断されることとなります。ちなみに、第1約束期間の締約国の排出削減目標達成状況を確定するためには、2012年の国内排出量の確定が前提条件となるため、そこからさらにクレジットの移転によって最終的に第1約束期間全体の削減目標の達成条件の確定を行うための期間が必要となるため、追加的な調整期間が認められています。この最終確定期限はCMPで決定されることとなっていて、2015年後半くらいになるのではないかと言われています。それまでは、2012年末以前の排出削減に伴うクレジットの移転・取得は、上記の制約の対象外となります。


(2)クリーン開発メカニズム(CDM)に関するガイダンス(決定5/CMP.8)
 現行CDMの課題解決等について、CDM理事会からのCMPへの報告を踏まえて、事務レベル折衝での交渉が行われました。2012年は、CERの需要が減少を続け、CER価格の下落が止まらず、プライマリーCER単価が1USドルを割り込むという事態に陥りました。この点は、CDM政策対話でも最も優先度の高い課題として認識されています。しかしながら、市場動向に委ねることこそが「市場メカニズム」であるCDMの基本であることに鑑みれば、市場の反応は受け入れざるを得ないとも言えます。とは言え、炭素市場は温室効果ガス(GHG)削減義務という人為的な線引きをベースにして存在しているものであり、その意味では、クレジットの需要はコントロール可能なものとも言え、ゆえに投資家保護策の案がCDM政策対話の提言に含まれているのでしょう。
 CDM政策対話の提言では、このCER需要危機に対する緊急措置の必要性を述べており、各締約国が削減目標の約束を強化すること等とともに、市場安定化という至上命題の下で新たなCER買い取り基金の創設なども謳われています。
 このCER買い取り基金の創設については、CMP8でのCDMに関する交渉の中でも当初議論の対象になっていたようですが、仮にそのような基金を作ると現在CDM登録時等に徴収されている収益分担金のプールがすぐに底をつくだろうという見解も聞かれました。
 また、今次CMPは第1約束期間の終期を目前に控え、いわゆる「マラケシュ合意」を越えていく議論も行われることとなっており、これまでのCDM実施の基礎的基準であった「CDM様式手順(Modalities and Procedures:M&P)」の改善・改訂という観点からも議論が行われました。
 以上のような様々な観点・論点を踏まえ、また各国の関心が絡みながら、交渉が進められ、交渉期限を過ぎての延長戦交渉の結果、未合意段落はすべて削除する形で決定文書案が取り纏められ、CMPにて決定が採択されました。主なポイントは以下の通りです。
 なお、CER安定化基金については、決定文書には盛り込まれず、すなわち創設は(現時点では)されないこととなりました。
  • 京都議定書第1約束期間中のCDMの成功を歓迎。80ヶ国以上にわたり、5,200件以上の登録プロジェクトがあり、また27ヶ国以上の50件のプログラムCDM(PoA)が登録されている。10億t分以上のCERが発行され、これらに2150億USドル以上の投資がなされている。
  • CDM政策対話の作業結果及び提言に留意し、CDM理事会(EB)はその提言を検討すること。
  • CDM実施手順(Modalities and Procedures:M&P)の第一回見直しを、CMP9において実施する。CDM M&Pの変更点に関する意見を、2013年3月25日までに事務局に提出するよう、締約国及び認定オブザーバー機関に求める。また、CDM EBもM&P変更に関する勧告を提出し、SBI38にて検討する。なお、SBI38までに事務局はM&P見直しプロセスの促進を目的としたワークショップを開催する。SBI39においてCDM M&Pの変更に関する勧告を準備し、CMP9での検討・採択を行う。以下についても、CDM M&P見直しのプロセスで検討する。
    ・有効化審査・検証・認証の各報告書における重要な不備
    ・締約国のプロジェクト/PoA承認状の撤回・一時停止の問題
    クレジット獲得期間の長さ
  • CDM EBが指定運営組織(DOE)の再認定の期間を3年から5年に延長することができることを認める。
  • CDMプロジェクト・PoAによる持続可能な開発のコベネフィットを評価する自発的手法の開発を歓迎。CDM EBは、この持続可能な開発評価ツールの利用状況を評価し、CMP9に報告すること。
  • CDM登録簿中のCERの自発的取り消しの手続きに関するCDM EB及び事務局の作業完遂を歓迎。
  • 追加性証明基準(特に「その種で初めて(first-of-its-kind)」及び一般慣行に関して)の改善を歓迎しつつ、小規模プロジェクトへの簡素な追加性証明方法の適用拡大(ポジティブリストを含む)について、更なる作業をCDM EBに要請。
  • 標準化ベースラインに関する規制枠組みの開発・実施にかかるCDM EBの作業を歓迎。
  • PoAに関する以下の継続的作業を歓迎。
    ・PoAの均一性を担保し、デバンドリングを防ぐために、CPAの追加に係る適格性基準によって技術タイプの差異を適切に反映すること
    極小規模PoAのモニタリング・検証に関してデータ欠損がある状況に対処するための現実的なアプローチを認めること
    DOEへのアクセスが限定的な場合又は取引費用が非常に高くなる場合等において、同一のDOEにより有効化審査と検証を行うこと
  • CDM EBは、取引費用の低減化を目的として、方法論の簡素化・簡易化に関する作業を継続すること。
  • CDM EBは、A/Rプロジェクトの環境十全性を保障するために保守的な推計を用いる限りにおいて、ベースライン炭素蓄積量・吸収量の推計のためのA/R方法論におけるより費用対効果の高いアプローチの利用(リモートセンシングをモニタリングで利用することを含む)を検討すること。
  • CDM EBは、非永続的CERの原則に整合することを確保しつつ、クレジット獲得期間中のA/Rプロジェクトの検証時期に関する柔軟性を検討し、その結果をCMP9に報告すること。
  • ある国から他国へのCO2の移動の起こるCCSのCDMプロジェクト、あるいは地中貯留庫が2ヶ国以上にまたがるCCSプロジェクトの適格性と、CCSプロジェクトからのCERの世界的保留口座の構築は、SBSTA44で検討すること。
  • CDM EB及び事務局は、CDMプロジェクト(PoA含む)の登録プロセス及びCER発行プロセスの簡素化の方法の模索を継続し、申請書受領から書類不備確認(completeness check)開始までの平均期間を15日(暦日)以内とすること。
  • 追加性が自動的に認められるCDMプロジェクトの有効化審査プロセスの見直しの可能性について、CDM EBは検討すること。
  • 検証にかかる重要性(materiality)概念の適用に関するガイドラインの実施を通じて得られた経験を踏まえ、CDM EBは同ガイドラインの改善を行うこと。
  • CDMローンスキームの運用開始を歓迎。
  • CDMプロジェクトが少ない地域でのCDMの促進、及び当該地域レベル・国レベルでの利害関係者の支援のための、地域協力センターの創設を歓迎。
  • CDMプロジェクトが少ない地域の締約国の指定国家機関(DNA)に対するヘルプデスク・研修を含む、CDMプロジェクト(PoA含む)の地理的不均衡是正のためのCDM EB及び事務局が実施した活動を歓迎。
  • CDMプロジェクトの取引費用低減とCDMプロジェクトの地理的不均衡是正への貢献のために、CDM認定基準の規定に沿った上で、DOEは開発途上国にオフィスを設置するよう、要望する。

 また、これ以外のCDMに関する議題としては、SBSTAにおける「CDMプロジェクトとしての二酸化炭素の捕捉・地中貯留(CCS)」と「京都議定書3条3・4項とCDMの下での土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)」、及びSBIにおける「CDM EBの決定に対する不服申し立てのための手続き・メカニズム・制度の整備」がありました。SBSTAでのCCSに関する議題では、複数国にまたがる貯留庫を利用するCCSプロジェクトの適格性との関連で、CCSクレジット(CER)の世界的保留口座の開設を決定し、また複数国にまたがる貯留庫を利用するCCSプロジェクトのCDM適格性を認める決定が行われました。SBSTAのLULUCFについては、クレジットの非永続性に代わるアプローチ等が検討されましたが、交渉継続となりました。SBIでの不服申し立てに関する議論は、不服申し立ての手続き・メカニズム・制度を定める文書案が示されはしましたが、交渉継続となりました。


(3)共同実施(JI)の実施に関するガイダンス(決定6/CMP.8)
 JI監督委員会(JISC)のCMPへの年次報告を踏まえ、CMP全体会合においてJISC議長より「今次CMPにおいて、JIガイドラインの改訂案の検討を行うこと、及び2013年以降の移行期措置の内容確定を行うこと」が要請されました。
 JIは先進締約国間での協力によりホスト国でのプロジェクト実施によりホスト国で削減された分を、ホスト国のAAUをERUに転換して投資国に引き渡すというものであるため、AAUが設定されている2008〜2012の期間のみを対象とした「JIガイドライン」の下で実施されてきました。第2約束期間の設定についてはCMP7で決定されましたが、各国にAAUが割り当てられる基礎となる削減目標値が決定され、また第2約束期間に関する改正京都議定書の批准が済まなければ、AAUが割り当てられず、すなわちERUを発行できないという状況が起こることが予想されていました。これらを受けて、JISC議長はJIガイドラインの改訂とAAUが割り当てられるまでの移行期措置に関する早期決定を求めたのです。特に、移行期措置については、第2約束期間のAAUから前借りするというオプションと、第1約束期間のAAUをERU化するオプションとがJISCから示されており、その取扱いをどうすべきかの決定をCMPに要請しました。
 これらを踏まえ、JIについても、事務レベル折衝で交渉が進められました。第1回目の事務レベル折衝については、公開で議論が行われましたが、その後は非公開の非公式協議で進められたため、交渉経緯をフォローできませんでした。通常会期中に2回は公開になるのですが、2回目の公開協議も結局非公式協議が終了しないためにキャンセルとなりました。最終的には、以下のような決定文書がCMPで採択されましたが、上記のJISC議長からの要請については検討の場を設定するにとどまりました。
  • 京都議定書第1約束期間後のJIの継続的成功を確保する必要性を強調。
  • 京都議定書第2約束期間の目標値に係る京都議定書改正が発効するまでの期間のJIガイドラインの確認手続きに関する運用継続にかかるJISCの意向を認識。
  • JIガイドライン及び他のJI関連CMP決定の改訂の仕方に関して、締約国及び認定オブザーバー機関は2013年2月18日までに意見を提出し、JISCからの提言も含め、SBI38で検討すること。SBIは、JIガイドライン改訂案を含む勧告を準備し、CMP9でその勧告を検討する。
  • JIガイドラインの見直しについて、将来のJI運用を特徴づける以下の重要ポイントであることに合意する。
    JIプロジェクトに対する、単一の統一トラック
    CDMのDOE認定プロセスとの統合化
    JIプロジェクトに必要となる全ての公開情報の、英語でのUNFCCCウェブサイト上での公開
    JISC決定に対する不服申し立てプロセス
    プロジェクトの追加性確保のための明確・透明・客観的な要件
    ベースライン・モニタリング・報告の承認に関するホスト国の要件(ホスト国による標準化ベースライン設定に係る明確・透明・客観的な要件を含む)
  • SBIがJIガイドライン改訂案の準備に当たっては、以下について留意すること。
    ホスト国間での共通アプローチを保証するのに必要となる監督レベル
    JIプロジェクトの追加性:プロジェクトタイプによるポジティブリストの概念や、JIプロジェクトの事前考慮、標準化ベースラインの適用など
    ERUの発行
    吸収量増加を目的としたJIプロジェクトのアカウンティングの統一性


B新たなメカニズム(FVA・NMM)に関するCOP決定
 新メカニズムに関するCOP決定は、決定1/CP.18「バリ行動計画に従った合意成果」として採択されました。以下にその概略を示します。

<決定1/CP.18>
II. 気候変動緩和の国別・国際的な行動の促進
 D. 先進国・開発途上国の異なる状況を考慮した上での、緩和行動の費用対効果の向上及び緩和行動の促進のための、市場活用機会を含む様々なアプローチ

1. 様々なアプローチのフレームワーク(FVA)
段落41. 締約国が個別又は共同で、先進国・途上国の異なる状況を考慮した上での、緩和行動の費用対効果の向上及び緩和行動促進のための、市場活用や非市場活用の機会を含む様々なアプローチの実施を開発できることを承認する。
段落42. 決定2/CP.17の第79段落に設定された、全ての様々なアプローチは現実的で永続的で、かつ追加的で検証された緩和効果を実現し、努力の二重計上(ダブルカウント)を回避し、GHGの純減かつ/または排出回避を達成する基準に合致したものでなければならないことを再強調する。
段落43. 様々なアプローチの活用は、特に先進国の緩和の野心度の向上を促進することを確認する。
段落44. SBSTAに、COP19に決定案を勧告することを目指して、関連するワークショップの報告、技術文書、既存メカニズムの経験を含むAWG-LCAの作業を利用して、様々なアプローチの枠組みを策定する作業計画を運営するよう要請する。
段落45. どの枠組みもCOPの権限と指導の下で開発されるであろうことを考慮する。
段落46. 上記第44段落に述べられた作業計画は、とりわけ以下の要素に取り組まなければならないことを決定する。
(a)枠組みの目的
(b)枠組みの下に含まれる様々なアプローチの範囲
(c)環境十全性の確保のための一連の基準と手続き
(d)緩和効果の正確で一貫した記録と追跡を通じた二重計上(ダブルカウント)を回避する技術的な仕様
(e)枠組みの制度設計
段落47. SBSTAに、COP19に決定案を勧告することを目指して、非市場アプローチを策定する作業計画を運営するよう要請する。
段落48. 締約国及び認定オブザーバーに、2013年3月25日までに、上記の第44〜47段落で述べられた事項に関して、様々なアプローチの運営に関連する情報、経験、成功事例を含む意見書を事務局に提出するよう案内する。
段落49. UNFCCC事務局に、これら情報、経験、成功事例を取りまとめて公表するよう要請する。

2. 新たな市場メカニズム(NMM)
段落50. SBSTAに、COP19に決定案を勧告することを目指して、関連するワークショップの報告、技術文書、既存メカニズムの経験を含むAWG-LCAの作業を利用して、決定2/CP.17に定められたメカニズムの様式と手続きを策定するワークプログラムを運営するよう要請する。
段落51. 作業計画において、例えば以下に示す、上記パラグラフ50に述べられたメカニズムの考えられる要素を考慮することを要請する。
(a)COPの指導と権限の下での運営
(b)メカニズムへの締約国の自発的な参加
(c)現実的で永続的で、かつ追加的で、検証された緩和効果を実現し、努力の二重計上(ダブルカウント)を回避し、GHGの純減かつ/または排出回避を達成する基準
(d)排出削減、排出抑制かつ/または排出回避のための正確なMRVのための要求事項
(e)参加する締約国により定義され、セクターかつ/またはプロジェクトベースによって、広範な経済活動による緩和を掘り起こす手法
(f)野心的なリファレンスレベル(クレジット閾値かつ/または取引枠)の設定、登録、定期的な更新と、クレジット閾値以下の緩和または取引枠に基づく排出削減量の定期的な発行のための、保守的な方法の適用を含むクライテリア
(g)正確で一貫した排出削減量の記録と追跡
(h)補完性
(i)管理費用をカバーし、適応の費用を必要とする気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国の支援するための収益の共有
(j)持続可能な開発の促進
(k)民間及び公的機関の効果的な参加の促進
(l)メカニズムの迅速な開始の促進
段落52. 締約国及び認定オブザーバーに、2013年3月25日までに、上記のパラグラフ50-51で述べられた事項に関して、メカニズムの設計と運営に関連する情報、経験、成功事例を含む意見書を事務局に提出するよう案内する。
段落53. UNFCCC事務局に、これら情報、経験、成功事例を取りまとめて公表するよう要請する。

 COP17決定では一まとまりの文章の中でそれぞれ「様々なアプローチ」と「新たな市場メカニズム」がそれぞれ記載されていましたが、COP18決定ではより具体的に「Framework for various approaches(FVA)」と「New market-based mechanism(NMM)」の見出しが追加され、明確に分類されました。日本が提案している二国間オフセット・クレジット制度(JCM/BOCM)はFVAに含まれ、EUが提案している分野別クレジット化/取引メカニズム(SCM/STM)はNMMに含まれるものと考えられています。
 FVAについては、COP17決定では枠組みを「検討する(consider)」となっていましたが、COP18決定では「策定する(elaborate)」となるなど、より前に進んだ内容になっていると言えます。さらに枠組みを策定する作業計画に含まれる要素(目的、範囲、環境十全性確保のための措置、ダブルカウントの回避、制度設計)が具体的に例示され、作業計画をSBSTAが運営することが決定文書に具体的に示されました。
 NMMについては、メカニズムの「実施手順(modalities and procedure)」を策定するための作業計画に含まれる要素(正確なMRV、セクターアプローチ、リファレンスレベルとクレジット閾値、排出削減量の記録と追跡、補完性など)がFVAより詳細に示されており、FVA同様に作業計画をSBSTAが運営することが決定文書に具体的に示されました。
 二つのアプローチの大きな違いは、FVAについてはそれぞれのアプローチの傘となる枠組みをCOPの権限と指導の下で開発するというのに対して、NMMは運営そのものがCOPの指導と権限の下で行われるというガバナンスの面です。言い換えれば、大枠に収まっていれば分散型の統治が可能であるFVAに対し、NMMはCDMと同様COPが中央集権的に統治する仕組みということができます。また記録・追跡の対象が、FVAでは削減効果(mitigation outcome)であるのに対し、NMMではユニット(unit)となっています。
 共通する要素としては、真の、永続的で、追加的で、検証された緩和の効果をもたらす基準(Standard)に合致することや、ダブルカウント回避のための措置などがあり、JCM/BOCMを含むFVAに関する議論は、同時並行で議論されるNMMの議論の影響を受けるものと考えられます。JCM/BOCMのMRV方法論に関連する項目として、特にNMMの要素として挙げられている正確なMRVのための要求事項や野心的なリファレンスレベルとクレジット閾値による保守性の基準が挙げられます。今後COP18決定を受けFVAとNMMがどのように制度設計されるかについては、FVA及びNMMに関する締約国及び認定オブザーバーの意見書やSB38などの国際交渉の動向を把握していく必要があります。

 なお、一つ留意しておくべきポイントは、NMMがEUの提案するSCM/STMと一対一対応と考えても差し支えないと思われますが、FVAはその語が示す通り「様々な」アプローチを含むもので、FVA=JCM/BOCMという一対一対応の関係にはないということです。決定文書の文言にもあるように、FVAは「個別又は共同で」実施・開発することが認められていることから、各国国内の排出量取引制度などもFVAに含まれるということです(むしろ、国内排出量取引制度の方がFVAの議論の中でより中心的に考慮されている可能性もあります)。つまり、FVAを共同で実施するということは、各国の国内排出量取引制度の相互連携を主に意図している可能性があることには、今後の交渉動向を把握する上でも留意する必要があるポイントだと思われます。


C強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)の作業計画
 ADPの第1期第2回会合が開催され、焦点となっていた2015年に新たな議定書又は法的文書等の合意に向けたADPの作業計画が採択され、今後のADPの議論が本格化する基礎が整いました。
  • ADPの作業は、できる限り早く、遅くとも2015年までに完了させる。
  • 2013年から実質的な議論を至急進める。
    SB38セッションと同時期に開催(2013年6月)
    COP19セッションと同時期に開催(2013年11月)
    2013年4〜5月、同年9月(両方、又はいずれか)
  • 2014年には最低2回、2015年にも最低2回(いずれもSB・COPと同時期開催)。加えて、2014年の追加会合については2013年末までに、2015年の追加会合については2014年末までに決定する。

【作業系統1】(2020年以降の枠組みに関する新議定書/法的文書に関する作業):
  • 2013年前半に、共同議長が具体的課題の特定。
  • 2013年中に円卓議論とワークショップを開催(上記共同議長特定の具体的課題について議論)。
  • 緩和、適応、資金、技術開発・移転、能力開発、行動・支援の透明性に関する事項について、締約国及び認定オブザーバー機関から意見提出を受ける。以下の側面を考慮すること。
    UNFCCCの原則のADPへの適用
    UNFCCC下の他のプロセス及びその他の多国間プロセスでの経験・教訓
    新議定書/法的文書の対象範囲・構造・設計
    取り組みの定義・反映の仕方

【作業系統2】(2020年までの削減目標野心化):
  • 2013年前半に、共同議長が具体的課題の特定。
  • 2013年中に円卓議論とワークショップを開催(上記共同議長特定の具体的課題について議論)。
  • 2013年は、緩和目標の野心向上に関する作業計画を通じて、野心の強化のための行動・イニシアティブ・オプションについて、締約国及び認定オブザーバー機関から意見提出を受ける。以下の側面を考慮すること。
    UNFCCCの原則のADPへの適用
    緩和と適応の便益
    障壁とその克服方法、及び行動のインセンティブ
    実施支援のための資金・技術・能力開発
  • これらの意見提出を考慮し、ワークショップを複数回開催する。2013年にワークショップを開始し、早急・費用対効果的・衡平な温室効果ガス排出量の削減のためのイニシアティブ・行動の特定、相互作用化、実施を促すことを目指す。
  • 意見提出に含まれる緩和目標の野心向上のための行動・イニシアティブ・オプションの緩和効果に関する情報をまとめた技術文書(テクニカル・ペーパー)を、事務局が準備する。SB38セッション時に開催されるADP会合の際に、そのテクニカル・ペーパー第1版を出すこと。


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