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CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・河南省におけるトチュウ植林CDM実現可能性調査
調査年度2010(平成22)年度
調査団体日立造船株式会社
調査協力機関河南省霊宝市天地科技生態株式会社、中国国家林業局調査企画設計院、河南省林業局、大阪大学、九州大学、西北農林科技大学、株式会社スマートエナジー
調査対象国・地域中国(河南省三門峡市)
対象技術分野植林
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2012年〜2071年 (60年)/2012年〜2032年 (20年)
報告書
プロジェクトの概要 中国・河南省におけるトチュウ植林CDMプロジェクトは、2012年から2014年までの3年間に河南省三門峡市の約1,700ヘクタールの土地で植林活動を行うものである。植林樹種の選択においては、材の経済的価値、植林土地との親和性、炭素吸収量等を総合的に考慮し、トチュウを主要栽培樹種として採用することになった。日立造船と河南省霊宝市天地科技生態株式会社は、本プロジェクトのプロジェクト参加者である。
適用方法論AR-AMS 0001「草地又は耕作地における小規模A/R CDMプロジェクト活動のための簡易方法論(Version 06)」
ベースラインの設定 本プロジェクトのベースラインは、承認済み方法論AR-AMS 0001「草地又は耕作地における小規模A/R CDMプロジェクト活動のための簡易方法論(Version 06)」の要求事項に従い、「プロジェクトバウンダリー内の炭素プールに生じている現在、もしくは歴史的土地利用変化が継続すること」を採用する。
 実施した実地調査によれば、本プロジェクトの植林対象地は、荒廃した草地であり、ほとんどが灌木と草に覆われている状態である。樹木も一部に見られるが、それらの樹冠率が20%以下である上、樹高も2mに満たないことから中国政府が定めた森林の定義を満足するものではない。本プロジェクトの予定地が少なくとも1989年の時点では森林では無かったことを確認している。地方当局は、山への違法放牧や薪の採取等を取り締まり、対象地域での植林の試みを繰り返してきたものの、資金不足等の原因により活着率が低く、土地は荒廃したままで放置されている。
 事前の純人為的吸収量の計算方法は、ベースラインシナリオにおけるプロジェクトバウンダリー内の炭素プールにおける炭素蓄積量の変化の合計で算出する。
追加性の証明 追加性の証明においては、CDM 理事会が承認した「追加性の実証及び評価のためのツール」に基づき、バリア分析の手法を使用する。

(1)インベストメントバリア
     同じ地域で栽培され樹木と比べ、トチュウの単位面積あたりの初期投資額は高く、一般的樹種の3倍近くの投資を要する。また、プロジェクト実施後の管理コストにおいても、トチュウは一般的樹種より森林管理コストが高い。一方、本プロジェクトの実施地域は、農業が主要産業であり、農民の年間平均収入が比較的低く、主に農業生産によるものである。投資回収年数の長い植林プロジェクトが決して経済的に魅力のある事業ではないため、投資する企業、又は融資を提供できる金融機関がほとんどない。
(2)技術的バリア
     本プロジェクトの実施予定地は急峻な山間部に位置しており、植林が難しいだけでなく、苗木の活着率が著しく低い地域である。既述の通り、この点については既に様々に試みが行われてきたが、成功に至る実績が少ない。
(3)一般慣行バリア
     本プロジェクトの実施予定地は、長きに亘り鉱工業を中心として発展した地域であるため、植林事業を積極的に取り組む企業が少ない。また、植林・営林技術を持つ人材が少なく、またこれらの人材を雇用することも困難である。

 クレジットの売却益がない場合、プロジェクトの内部収益率が5.94%(税引き後)であり、国の定めたベンチマークより低い。クレジット売却益がある場合、内部収益率が改善される。従って、本プロジェクトを吸収源CDMに組成し、国連登録を果たすことによって、プロジェクトの経済性が改善し、金融機関からの融資を取得する可能性が高くなる。また、吸収源クレジットの売却益を用いて、その後の維持管理に必要となる資金を確保できるため、プロジェクトの実施可能性、継続性が高くなると思われる。
GHG削減想定量年平均13,518tCO2 ; 270,360tCO2/20年間
モニタリング 本プロジェクトの主なモニタリング項目には、実施地の緯度経度、植生階層毎のプロジェクト活動実施面積、サンプルプロットの位置、胸高直径、樹高、木材密度及び土地所有形態が含まれる。
環境影響等 本プロジェクトは、土壌流出が比較的深刻である劣化土地で植林活動を行うものである。本プロジェクトの実施は対象地に森林資源を増やすとともに、以下の環境効果をもたらすことができる。

(1)生物多様性の保護
     植林プロジェクト活動は、対象地域の森林許容量を増やし、森林カバー率を引き上げることが可能である。現在、本プロジェクトの土地は劣化草地であるが、森林面積が増えることによって、野生動物の生息範囲が広くなり、生態系を改善できると思われる。植林プロジェクトの実施により、地域住民の雇用機会が増え、収入が増える。この結果、生活のための薪炭採取、立木の乱伐・乱獲が減り、ひいては生息する動植物全般の保護が間接的に実現されることが期待される。
(2)土壌流出の抑制
     土壌流出の抑制は、植林による環境改善効果の1つである。本プロジェクトの実施場所は河南省西部の水資源保護区に位置しており、また傾斜面で植林するため、事前に十分な注意を払った上で、植樹計画を立案する必要がある。但し、トチュウは広く深く根をはるため、土壌侵食リスクが低減されると思われる。「土壌流出変化量」の数値化には、一般的にアメリカ農務省が開発した土壌流出予測式(USLE:Universal Soil Loss Equation)が用いられており、本式を用いることで植林前後での土壌流出量の抑制効果を数値化可能であると考える。
事業化に向けて 事業化にあたっての最大の課題は資金問題である。
 本プロジェクトの総投資金額は、3,764.5万元であり、その内建設用資金3,495.9万元、この内50%を銀行借入として貸付利息6.14%とする建設期間金利合計163.9万元、また流動性資金104.7万元を想定している。河南省霊宝市天地科技生態株式会社の調達資金は2,016.7万元(プロジェクト投資総額の53.6%)、銀行借入が1,747.9万元(同46.4%)となる。但し、河南省霊宝市天地科技生態株式会社は自己資金による資金調達、銀行貸付による資金調達等が進まない可能性がある。その場合は、国際的補助金、緑化基金等の活用、あるいは日立造船株式会社からの出資等を検討する必要がある。最大の課題である資金調達問題が解決すれば本プロジェクトの事業化は計画通り進行すると思われる。
「コベネフィット」効果
(ローカルな環境問題の改善の効果)
 プロジェクト実施によるホスト国における環境汚染対策等と温暖化対策の「コベネフィット」の実現に関しては、植林事業の特性上、「コベネフィット定量評価マニュアル」に基づく評価は困難であるが、森林が回復することによる「土壌流出変化量」の数値化、「生物多様性」への貢献について調査を実施しており、これらの調査結果については前述の環境影響調査結果の項に記載している。
ホスト国における持続可能な開発への寄与 本プロジェクトの実施は、以下のような形でホスト国である中国の持続可能な開発に資すると考えられる。
 第一に、本プロジェクトの主要栽培樹種はトチュウであり、トチュウは対象地域の原生樹種であり、対象地域の気候、土壌、水環境等自然状況を適応できる。黄河中、下流域の土壌流出が著しい地域に樹木を植林することにより水害等に悩まされる地域の被災リスクを低減し、安定した農耕活動が実現することが期待される。
第二に、日立造船株式会社は長年、トチュウの副産物からゴムなどの付加価値の高い生産物を得るための研究を行っており、2010年にトチュウゴムの生産に成功している。栽培されるトチュウは木材としての価値を有するだけでなく、トチュウ副産物事業の実施により、中国農村地帯の経済効果の改善が期待される。
 第三に、本プロジェクトは小規模吸収源CDMプロジェクトであり、対象地の低所得層のコミュニティがプロジェクトに関与することが必要条件となっている。コミュニティによるプロジェクトへの関与方法については以下のように考えている。
    • 植林対象地のコミュニティの担当者を招き、社外監査役又は社外役員に就け、プロジェクトの管理責任者の一員として、役員会に席を設け、植林管理や運営に関する助言や意見等を提供してもらう。
    • 栽培や森林管理の関連知識等に関する研修会を定期的に開催し、地域住民を対象とするトレーニングを実施し、農民に栽培や病害虫病害虫予防、森林管理の知識を習得させる。植林対象地域では、一部の農民が自らヤナギやポプラ、果樹(リンゴ、ナシ、モモ、ナツメ等)の小規模栽培を試みている。栽培や病害虫病害虫予防に関する知識の習得によって、農民は自力で製材用樹木や果樹を栽培できるようになり、地域全般の経済発展を期待できる。
    • 地元の中学校または高校とは協力体制を構築する。学校は夏季休暇等を利用し、社会科研究の1つのテーマとしてトチュウの森林管理(除草や防虫作業等)に協力する。一方、企業(現地カウンターパート)は本プロジェクトによる利益を活用し、協力先の学校に本の寄付や運動場の整備等、地域社会に還元する活動を行う。
 このような取組は、植林プロジェクトの実施による地域住民の一時的な収入を増やすだけではなく、地域全般の持続可能な発展に貢献することが期待できる。

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