公益財団法人 地球環境センター
| お問い合わせ | English |
 Home > 事業 > CDM/JI事業調査

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名スリランカ・グリシディアチップによる産業熱利用施設における燃料代替プログラムCDM事業調査
調査年度2009(平成21)年度
調査団体株式会社エックス都市研究所
調査協力機関北海道電力株式会社、株式会社E2エンジニアリング、Nanpo Shokai.Ltd、スリランカバイオエネルギー協会、Ener Fab (Pvt)Ltd.、マハトマガンジーセンター
調査対象国・地域スリランカ
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間PoA事業期間=2011〜2039年/2011〜2021年
報告書
プロジェクトの概要 本プロジェクトは、化石燃料の純輸入国でありエネルギー需要増大に伴い国家財政への負担が深刻化するスリランカにおいて、早生樹であるグリシディア(学名:Gliricidia sepium)の木質チップを収集し、プログラムCDMの枠組みの下、産業熱源としての利用を図ることにより、化石燃料(燃料油、軽油)を代替、これによるGHG排出削減、大気汚染防止のコベネフィッツに加えて、その利用拡大を図ることによる同国内のエネルギー自給と農村地域の発展への貢献を目指すものである。
 本調査により、抽出された第一フェーズ案件3プロジェクト(Lion Brewery、Premium Exports Ceylon、Ceylon Cold Stores)の実施により見込まれるCO2削減量は、13,882tCO2/年、2011〜2020年の10年間で138,820tCO2である。また第二フェーズ以降、対象とする年間300kℓ程度の燃料油を用いているサイトでは、1サイトあたり約800〜900tCO2/年の削減が見込まれ、こうした大小の熱利用事業者が同国内に2000箇所想定されることから、本プロジェクトの汎用性は高いといえる。
 なお実施スケジュールに関しては、本調査終了後PoAの枠組みについて利害関係者の合意に基づくより具体的な検討が必要となる。また、第一フェーズCPAとして選定された3事業者と、Ener Fab社の間で事業契約に向けた交渉を行う一方で、できるだけ早期にPoA登録に向けた有効化審査の開始が望まれる。
適用方法論 小規模方法論AMS-I.C.「利用者のための熱エネルギー」(Ver.16)を適用。また、同方法論に基づき、バイオマス燃料の調達に関しては、AM0042「新規開発された専用プランテーションから調達するバイオマスを利用したグリッド接続発電」(Ver.02)を用いた。
ベースラインの設定ベースラインシナリオ:
 本プロジェクトにおけるベースラインシナリオは、産業熱利用設備における化石燃料の燃焼による熱供給であり、グリシディア等のバイオマス残渣は刈取り後、農地、もしくは農家の裏庭に放置され長時間かけて分解されるものである。未利用地を用いてグリシディア等の短周期で継続的に収穫可能な樹木を本プロジェクト活動への燃料供給目的で新規に栽培する場合、ベースラインシナリオは、土地の未利用状態の継続となり経年的な劣化状態を伴う。

プロジェクトバウンダリー:
  • PoAバウンダリー:スリランカ全土。
  • CPAバウンダリー:小規模方法論I.C.(Ver16)に基づき、再生可能エネルギーを創出する機材、及び再生可能エネルギーの消費設備の物理的、地理的境界。
追加性の証明 追加性の評価について、「追加性の実証及び評価のためのツール」(Ver05.2)に基づき、Step1)義務的法律・規制に一致するプロジェクト活動代替案の特定、Step2)投資分析、Step3)バリア分析、Step4)一般慣行分析の手順で検討を行った。
  • (Step2)投資分析:
     スリランカ国立銀行の貸出金利である8%(2010年1月に政府決定により19%から8%に大幅引き下げ)をベンチマークとし、ベンチマーク分析を行った。IRR評価は設備の耐用年数と考えられる15年とし、感度分析では、初期投資額、バイオマス燃料の調達価格、化石燃料価格、工場稼働率をそれぞれ10%変動させ、また、事業期間についても20年での評価も併せて行った。投資分析により明確なバリアを示せないCPAについては、「追加性の実証及び評価のためのツール(Ver05.2)」に基づき、バリア分析を行うことで、追加性の立証を行うこととした。
  • (Step3)バリア分析:
    ・一般的な慣行に伴うバリア:
       グリシディアを主な燃料とするガス化設備はこれまでにスリランカ全土で8基存在するが、これらはすべて外国政府による初期投資補助が投入されており、純粋な民間投資による施設は一基も存在していない。中・大規模の熱利用プラントに対してグリシディアを中心とするバイオマス燃料を利用した1%にも満たない導入率であり、一般的な慣行に伴うバリアが想定された。
    ・原料調達に伴うバリア:
       スリランカにおける主なエネルギー需要地はコロンボ市を中心とする西海岸部に集中している。一方、グリシディアの潜在的供給地となり得る農村はその他の地域に分散している。このことはグリシディアを始めとするバイオマスの燃料利用を検討する場合、少なくとも供給地と需要地間の物理的輸送が必要となる他、需要家が必要なバイオマス量を安定的に確保することに本業以外のところで多大な追加的な労力と資金投下を必要とすることが求められる。このことが、需要家がバイオマス利用設備に対する投資を躊躇する最大の要因の一つとなっており、バリアの存在が明らかであった。
    ・資金調達に伴うバリア:
       バイオマス燃料による化石燃料の代替事業は、通常、様々な不確定要素を含むため、特に借入先が中小企業である場合の融資は容易ではないが、CDM事業としての実施が可能となると、日本等の投資国企業の関与が担保されることによりリスクファクターに対する認識は改善され、融資の可能性が大幅に向上するとの認識が、スリランカのNational Development Bankより示され、資金調達に伴うバリアが想定された。
  • (Step4)一般慣行分析:
     本プロジェクトに類似の活動として、i)バイオマス燃料を主に用いた既存のガス化設備、 ii)グリシディア以外の木質燃料を用いた既存のボイラー、 iii)極めて小規模でのバイオマス熱利用が挙げられるが、それぞれ本プロジェクトと明確な相違点があるため、一般的な慣行に伴うバリアが存在するといえた。
GHG削減想定量 13,882tCO2/年 (第一フェーズ対象の3事業による削減量)
モニタリング 本プログラムCDMでは、導入対象設備としてガス化設備、及びボイラー設備を想定している。小規模方法論I.C(Ver16)では、対象とする設備に応じてモニタリング計画を以下の通りに場合分けを想定した。
    ボイラー設備及び45kW以上のガス化設備導入ケースのモニタリング項目
    項目
    単位
    計測方法
    頻度
    QA/QC方法
    生成エネルギー流量
    m3/年、t/年
    流量計
    継続計測
    計測器のキャリブレーションの実施、メーカーの推奨による維持管理
    生成エネルギー温度
    温度計
    継続計測
    計測器のキャリブレーションの実施、メーカーの推奨による維持管理
    生成エネルギー圧力
    (※蒸気エネルギーの場合のみ)
    Bar
    圧力計
    継続計測
    計測器のキャリブレーションの実施、メーカーの推奨による維持管理
    バイオマス投入量(種別ごと)
    t/年
    伝票
    毎日
    第三者によるオンサイトチェック
    投入化石燃料量
    (※使用された場合)
    t/年
    伝票
    毎日
    第三者によるオンサイトチェック
      45kW以下のガス化設備導入ケーsのモニタリング項目
      項目
      単位
      計測方法
      頻度
      QA/QC方法
      バイオマス投入量(種別ごと)
      t/年
      伝票
      毎日
      第三者によるオンサイトチェック
      投入化石燃料量
      (※使用された場合)
      t/年
      伝票
      毎日
      第三者によるオンサイトチェック
    環境影響等
    • PDDに要求される環境影響評価の検討:
       中央環境局発行の「環境影響評価実施の手引き3版2006」に基づき、本プロジェクトで用いる熱源代替事業はすべて対象外となる。ただし、バイオマス燃料供給のための新規栽培を行う場合においては、i) 4haを超過する土地・湿地の開墾(第2項)、ii) 5ha以上の土地面積における木の伐採(第3項)、iii) 1haを超過する森林の非森林利用(第4項)、iv) 50haを超過する土地造成(Land clearance)等(第5項)等が環境影響評価の検討対象となるため、配慮が求められる。
    • 本プロジェクトによる環境影響の検討:
       本プロジェクトは、化石燃料を安価なボイラーで燃焼させ大気汚染物質を放出している工場において、環境配慮型の設備導入を行う環境改善事業であるため、設備転換により、周辺地域の環境負荷軽減が期待される。
    事業化に向けて 本プログラムCDM事業検討に参画している現地パートナーの事業化に向けた意欲は非常に高く、早期の事業化に向けて真剣に検討を進めている。ライオンビール社は、CDMとして燃料転換事業を実施することが同社の企業イメージの向上と、将来的なエネルギー管理のリスクヘッジに繋がることから、提案事業の実施に向けて強い意欲を示している。また、ユニリーバ社、コールドストア社に関しては、資金調達において市中銀行からの借り入れが課題となるが、現状で、エスコ事業として実施を計画中のエナファブ社が市中銀行と融資の可能性に関する交渉を進めている。プログラムCDMとしての事業登録に対するリスクが可能な限り低減されれば、事業化の見込みは十分にあるため、今後も引き続き、最大の課題であるPoAの登録に向けた取組みを行う。
    環境汚染対策効果 コベネフィットに関する検討では、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじん、二酸化炭素(CO2)を評価項目とした。表3に示すベースライン、及びプロジェクトシナリオを想定し、燃料油、軽油それぞれを代替した場合の対象物質排出量を算定した結果、いずれのガスも本プロジェクトの実施により低減され、またその効果は燃料油代替において顕著であることが明らかとなった。
      ベースライン及びプロジェクトのシナリオ概要と構成要素
      ベースラインシナリオ
      プロジェクトシナリオ
      摘要
      シナリオ概要既存ボイラーでの化石燃料の燃焼による熱生成(供給)木質バイオマスガス化装置でのグリシディアチップのガス化+ガス利用による熱生成(供給)
      熱源装置既存ボイラー
      (ボイラー本体+(排ガス処理設備)+熱供給付帯設備)
      木質バイオマスガス化装置
      (ガス化炉+排ガス処理設備+ガス燃焼ボイラー+熱供給付帯設備)
      同じ燃料を扱う場合にガス化装置採用により装置のコンパクト化及び熱効率の向上が期待できる。
      燃料化石燃料木質バイオマス(グリシディアチップ)グリシディアチップ利用によるCO2及びSOxの排出削減が期待できる。
      熱の生成化石燃料燃焼ガス化+ガス燃焼
      熱交換蒸気(水)等ガス直接燃焼、蒸気(水)等
      プロジェクト実施前の試算(定量化)結果(燃料油)

      評価項目

      単位

      プロジェクトラインの指標評価

      SOx排出量

      t/年

      SOx pjs(t/年)−SOx bls(t/年)=0−51.4=−51.4t/年
      年間51.4tのSOxを削減

      NOx排出量

      t/年

      NOx pjs(t/年)−NOx bls(t/年)=14.0−21.2=-7.2t/年
      年間7.2tのNOxを削減

      ばいじん排出量

      t/年

      ばいじんpjs(t/年)−ばいじんbls(t/年)=43.2−62.0=-18.8t/年
      年間18.8tのばいじんを削減

      GHG排出量

      t/年

      GHG pjs(t/年)−GHG bls(t/年)=0−5,542=-5,542t/年
      年間5,542tのCO2を削減
      プロジェクト実施前の試算(定量化)結果(燃料油)

      評価項目

      単位

      プロジェクトラインの指標評価

      SOx排出量

      t/年

      SOx pjs(t/年)−SOx bls(t/年)=0−0.01=−0.01t/年
      年間0.01tのSOxを削減

      NOx排出量

      t/年

      NOx pjs(t/年)−NOx bls(t/年)=3.2−5.4=-2.2t/年
      年間2.2tのNOxを削減

      ばいじん排出量

      t/年

      ばいじんpjs(t/年)−ばいじんbls(t/年)=11.5−9.9=-1.6t/年
      年間1.6tのばいじんを削減

      GHG排出量

      t/年

      GHG pjs(t/年)−GHG bls(t/年)=0−1,216=-1,216t/年
      年間1,216tのCO2を削減
        (注)表中下線部は要測定項目を示す。
        (注)pjs:プロジェクトシナリオ、bls:ベースラインシナリオ
    持続可能な開発への貢献 コベネフィット評価における効果(温室効果ガス削減効果、環境改善)に加えて、本プロジェクトにおいて期待される持続可能な開発への貢献は以下の5点が挙げられる。
    • ホスト国における土壌保全と土壌保全に伴う各種派生効果
       グリシディアはマメ科に属する植物であり、その特性である大気中の窒素固定を行なうことができる。そのため耕作不適地での栽培が可能であり、葉中の窒素が落葉に伴い土壌に還元されるので地力を向上させることができると考えられる。これを利用されなくなった荒地・荒廃地の再利用、低利用地の有効利用を行なうことにより、i) 土壌条件の改善、ii)土壌浸食防御(栽培地、並びに栽培区画)、iii)生物・植物多様化、iv)二酸化炭素吸収、等の効果が期待できる。
    • ホスト国における公害対策・環境改善
       グリシディアチップの燃料利用は、軽油や燃料油に比べて燃焼時のNOx、SOx、煤塵、SPMを削減することが可能である。特にこの削減効果は燃料油の代替において顕著である。現在スリランカの主要農産物であるココナッツや紅茶工場では、主に燃料油を利用している工場が多数存在することから、工場に隣接する農園内でグリシディアの栽培を促進し、燃料代替を図ることによって、大気汚染防止や地域住民の健康被害の改善が期待できる。
    • エネルギー自給の向上・貿易収支の改善
       国内エネルギー需要の増加と化石燃料の高騰により、エネルギーの輸入依存率の急激な上昇を招いているスリランカにおいて、エネルギー自給の向上と貿易収支の改善が期待できる。
    • 農村開発・地域間格差の是正
       グリシディア栽培により農村地域の人々に現金収入をもたらすことができるほか、葉の有効(堆肥)利用による化学肥料使用量の減量、飼料として利用することによる自家所有家畜の自給率の向上に起因する農業事業運営上のコスト削減も期待できる。これにより農村地域の継続的な発展に貢献することができる。
    • 内戦戦災地・震災地復興支援
       ホスト国は長きにわたる内戦を経験しており、国土の北部、東部、東北部は内戦により疲弊、特に激戦が行なわれた地域では周辺住民が避難、農地は放置され、荒廃が進んでいる。このような荒廃地、また津波・震災地である南部を中心とする沿岸部の乾燥地等の耕作不適地においてもグリシディアの栽培により復興支援への貢献が期待される。

    | Home | GECとは | 事業 | 出版物 | GEC支援のご案内 |

    Copyright Global Environment Centre Foundation (GEC). All rights reserved..